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ドレッサーは、食器棚は、冷蔵庫は?いくら、広々とした所に住んでいる友人がいたとしても、一式まとめて引き取ってもらうワケにはいかない。
私は恨めしい思いで、堂々とそびえる婚礼ダンスを見やった。
やっぱ、これしかないだろう。
私はひたすらブルーな気持ちで、受話器を握った。
プルルルルル、プルルルル……。
「はい、Nでございます」いつもの母の、気取った声。
「冗談ちやうの。
だから、帰っていい?」「いいわけ、ないやろ。
ダンナさんは、どう言うてるの」「わかったってさ」「真に受けてどうするの。
ケンカかね」「ケンカはしてへん」「それで、なんで離婚するの」一般的に、離婚しようという夫婦は、双方が激しくいがみあっていなくてはならないのだ。
私たちのように、ひとつ屋根の下で平和に暮らしている場合、本気で離婚を考えているとは周囲に理解してもらえない。
いったい、なにからどう、説明すればいいのやら。
「そんな、難しいこと、聞きなや(聞かないでよ)」私はテキトーにお茶を濁そうとした。
「理由もわからんで、おかえり、て言えるかね。
用件は?それだけ?じゃあ、もう切るよ」母は逃げるように、電話を切った。
数日後、夕食前の時間を見計らって、母のほうから電話をかけてきた。
「アンタ、さっき、おらんかつたやろ」「ああ、出かけてた」「ご飯作る時間におらんって、どういうことよ」抜き打ち検査に引っかかった、小学生になった気分だ。
「買い物に行ってたの」「ほんまかいね。
ご飯も作らん奥さんじゃ、いらんから出て行け、言われとるんやろ」頭では、私が一二行半を突きつけられたストーリーができあがっているらしい。
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